坂口美里とガルダスト
はちしょう
私達の市は、いくら田舎町とはいえ、ビールが売っている場所は、合計数十件。
すべて回らないと、50万円分もビールを買うことは出来ない。
もちろん、学校の先生をはじめとして、知っている大人に見つかるわけにも行かない。
作戦は、思いのほか、困難を極めた。
それにしても、麦100%天然水使用のビールはやっぱり、他のビールに比べて高いなぁ。
「ねぇ、どうして、他のじゃいけないの?ほら・・・あっちの缶の方が安いわよ。」
とあるスーパー。
唐突に、カオリにそんなコトを聞かれた。
「アレは、ビールじゃなくて発泡酒。全然違うものだって、お父さんが言ってたよ。それと、これ以外のビールは、どうしても不純物が混ざって、エネルギーが出ないんだよ。」
勝手な憶測だけど、たぶん間違いない。
そんなコトを繰り返しながら、私たちは、スーパーはもちろん。手当たり次第の酒屋やコンビニから、同じ銘柄のビールを買いあさった。
「あの・・・お客様は未成年では?」
等と、当然のごとく聞かれたりもしたが・・・。
「お父さんに頼まれたんです。お父さんも出不精で、買い物をこんなに可愛い兄妹に任せて・・・。いやになりますわね~。」
等と、不思議な言い訳で逃げながら、私たちはビールを大量に買い込んでは、お父さんお母さんにばれないように、部屋に持ち込んだ。
数えていないから良く分からないが、当然ビールは二人で10~20リットルを持つのが限界。
途中から、自転車というとっても便利な貨物機を使いだしたが、それでも、50万円分のビールを買うのには、とても時間がかかる作業だった。