坂口美里とガルダスト

「ところで、カオリ・・・大丈夫だったの?」


 買出し作戦を開始されてから、二時間がたったぐらい後だろうか。


 酒屋に向かう途中で、私は不意に聞いてみた。


 でも、残り資金35万。


 先は、マダマダ遠い・・・。


「何が?」


「爺やに全部話しちゃって・・・。」


「別に、全部じゃないわよ。ある程度は、歪曲している部分はあるわ。」


「でも~・・・。」


 例えば、普通の暖かい家庭を想像してみよう。


 そこにある日、かわいい一人娘が、世界を救うために異世界に飛ぶと言い出した。


 それこそ、暖かく「いってらっしゃ~い」と、言い出す親はいるのだろうか。


 ましてや、カオリの場合は、親ではなく、親が一任している「爺や」なのだ。


 下手をすれば、爺やの職を奪う行為ではないだろうか。


 とても、二つ返事で「かしこまりました。」という情景は想像しにくい・・・。


「大丈夫よ。もし、言うこときいてくれなかったら、私は、アマネの名前を捨てるとまで言ったんだから・・・。」


 あ・・・。つまり、脅迫したわけですね。お嬢様・・・。


「あ、っそ・・・。まぁ、兄貴が変わり身だから大丈夫だと思うけど・・・。」


 思わず、ため息が漏れた。


「信用しているのね?やっぱり・・・。」


「そりゃ、唯一の肉親ですからね・・・。」


 それに、私の人生の先輩。


 ある程度のピンチなら、簡単に切り抜けるだろう。


 なんだか、それぐらいの力が兄貴にはありそうな気がする。


 根拠はないけど・・・・。


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