坂口美里とガルダスト

「ああ、あのときの・・・。」


 それで、納得するカオリ。


「は?お前、もしかして、話したの?」


 それに対して、兄貴は少し驚いたような声を上げる。


 同時に向けられる鋭い視線。


 余計なコトをしてくれたな・・・と、その顔が言っている。


 まぁ、無理もないか。


「うん。なんか、話の流れでつい・・・。」


「あのな・・・なんで、話すかな・・・お前、口が軽いのにもほどがあるぞ。」


 顔をしかめて、思わずふさぎこむ兄貴が、見ていてどこか情けなかった。


「いや~。ごめんごめん。でも、全部を話したわけじゃないよ。って言うか、私も全部を知っているわけじゃないし・・・。」


 それは、間違いない。


 事情のすべて知っているのは、今では兄貴とお母さんぐらいだ。


「当たり前だ、お前になんて話せるかアホ。」


 再び、全力で頭をどつかれた。


「いてぇ~。」


 頭をさすりながら、口にする。


「相変わらず、仲良しさんね。面白いわ。」


 そんなやり取りを身ながら、笑顔を向けるカオリ。


「だれが、こんな妹・・・欲しければ、すぐにでもやるよ!」


「何を言うか、このバカ兄貴こそ、交換してよ!」


 不毛すぎるやり取り。


 アホ丸出しじゃん・・・私たち。


「両方とも、遠慮しておくわ。」


 笑顔で、やんわりと断られた。


 なんか、色々な意味でショックだ。


 でも・・・・・・まぁ・・・・・。


 私が撒いた種とはいえ、美雪の話を誤魔化せただけでも良いか・・・。


 兄貴の方にしたって、あんな別れ方をした恋人の話なんて、いつまでもしたくないだろうし・・・。

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