坂口美里とガルダスト

「そりゃ、先生だって言うよ。あんな頭の悪い人間が行くような高校・・・。」


「頭の悪いって・・・松本おじさんの母校でしょ?」


「俺は、いいんだよ。頭悪かったんだから・・・。」


 そういうことに対して、隠さず、開き直るあたりも、松本おじさんのいいところだ。


「でも、私は大きな夢があって、その夢を誰かに任せるわけにはいかないから・・・。その夢を、誰にも渡したくないから、だから絶対腹工で、ロボット工学を学ばなくちゃいけなくなったんだ。」


 それは、決意の言葉。


 カオリの世界のような悲劇は、この世界では繰り返さない。


 繰り返させない。


 そのためには、私が頑張らなくちゃ行けないんだ。


 先ほどから、後ろで黙ったままのカオリが、その言葉を聞いて、うれしそうに笑ったのが、どうしてだか、分かった。


「美里ちゃんの夢?・・・それって、ガルダストを作るってやつ?」


「うん。」


 元気一杯に答える私。


「はぁ~・・・って、美里ちゃんの両親なら、ため息を作るところなんだろうけどね。俺は美里ちゃんなら、本気でやってのけそうな気がするよ。」


 その言葉が、嘘偽りから来る言葉じゃないことは、松本おじさんの表情を見れば分かる。


 本当に、いい人だ。


「当たり前じゃん。いっておきますけど、松本おじさんの商品も、言ってしまえば、私の研究材料なんですからね。」


「ハイハイ・・・。それで、今日は、どの品をお求めで?」


 松本おじさんは両手を下方に広げて、目の前に広がる、商品に私の視線を促す。


 私は、おじさんが促すままに、視線を商品に配って・・・。


「あれ?松本おじさん。今日は珍しく新作ないの?」


 気が付いたコトを、そのまま口にしてみた。


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