坂口美里とガルダスト

「あぁ、今日はな・・・師匠が死んでしまって、色々ドタバタしていたから、作る暇がなかったんだよ。」


「師匠?」


 初めて聞く単語だ。


「あぁ、実は、今まできつく口止めされていたんだけどな・・・俺の向かい側に住んでいたお婆さん・・・美里ちゃんたちが『黒髪の魔女』って呼んでいたのは、俺の師匠だったんだ。」


「え?」


「昔から、不思議な発明をたくさんする人でなぁ~。あ、美里ちゃんも見たことあるだろう?動く割り箸人形。あれなんて、まさに、魔法かと思えるぐらいよく出来た人形だよな・・・。まぁ、単純な動きしか出来ないから、子どもしか騙せないけどさ・・・。」


 そういえば、兄貴がおばあさんを黒髪の魔女と呼ぶきっかけになったのは、あの発明品からだった。


 ってことは、もしかして・・・。


「ねぇ、それじゃあ、もしかして昔、私にくれた蛍光灯って、お婆さんの発明品だったの?」


 今でも、利用頻度の高い蛍光灯。たぶん、今日の夜も使うことになるはずだ。


「あぁ、そうだよ。美里ちゃんたちには本当に魔女だって信じていたみたいだから、ずっと黙っていたけどな・・・どうだい、あの蛍光灯。ちょっと期待はずれだろう?」


「え?なんで?」


 あんなにすごい発明品を期待はずれだって?


 とんでもない。あれは、世界レベルに匹敵するものだと思えるのだが・・・。


「なんでって、こすると光るだけの蛍光灯だぞ・・・。しかも、微妙にスイッチが分かりやすいし・・・。」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 私は唖然とした。


 そんなはずはないのだ。


 そんなことだったら、隣に立つ女性は何者だというのだろう?

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