坂口美里とガルダスト

 それでも、本当に進学校の神谷大学付属高校に行って、やりたくない勉強を三年間続けるよりは、ずっとマシなのかもしれないが・・・。


「やっぱり、腹工だよねぇ~。」


 腹月工業高校。


 自分が通える範囲の高校の中で唯一、ロボット部がある工業高校。


 ただしあの高校は、進学率より就職率の高いことで有名。


 自分の成績から言って親も先生もいい顔しないだろうなぁ~。


 そんな風に考えながら、私が進路志望のプリントに『腹月工業高校』と書いた刹那、扉を一定感覚で叩く音が聞こえる。


「ハイ?」


 返事をすると、扉が開いて現れたのは長身の男。


 私と同じ童顔の持ち主で、大きな瞳と長いまつげ、小さな唇は本当にお前男かよ?といわんばかりに、可愛い。


 坂口睦月。


 悔しいことに、これでも私の実の兄。


 私としては、もっと男らしい兄が欲しかったのだが、残念なことに、私もこの兄に似たからこそ、ある程度美人になれたようなものなので、文句は言えない。


「美里、お前にお客さん。男から。」


 扉から顔だけ出して口にする兄貴。


 妙に「男」の部分だけを強調されても・・・。


「どうせ、隆でしょ?」


 分かっていることだから、別段驚かない。


 机に手をつけて立ち上がると、入り口まで歩を進める。


 男と女の壁。


 悔しいが、兄貴は私の頭二つ分背が高い。


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