坂口美里とガルダスト

「おやおや・・・どこかで、目にしたことあるかと思っておりましたら、カオリ様でいらっしゃるではありませんか?」


 その声は、突然耳に届いた。


 ねっちょりした、耳につくような男の声。


 顔を向けると、いかにも・・・といわんばかりの男が、両手をゴマすりながら私たちに近づいてくるのが見えた。


 脂ぎった顔。薄くなった頭。そして、においそうな髭。


 これでは、着られているタキシードもかわいそうだ。


「あら?アルタスさま。ようこそ、我が家にいらっしゃいませ。すいませんが、今、私は友人をお招きしている最中ですので、申し訳ありませんが・・・。」


「おやおや、そいつは失礼しました。いや、それにしても、最初は人違いだと思いましたよ。まさかこの国の経済界のトップクラスの一人である、アマネ家のお嬢様が、このような下種な人種と一緒にお食事を取られるとは、夢にも思いませんでしたので・・・」


 言いながら、ちらりと私のほうを見る「アルタスさま」


 なんだと?このハゲ豚。


「食事に身分は関係ないんじゃなくて?ところで、今日は、どのような御用事で。ご挨拶なら間に合っていますわ。」


 セ・・・セレブの会話だよ。


 おと~さ~ん。おか~さ~ん。私、今セレブの会話を聞いているよ~。


 ど~しよ~?


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