坂口美里とガルダスト

「そう、1567式フォムラ最新モデル鉄人機。私の自慢の愛機よ。さっそくエンジンをかけてみましょう。」


 言うや否や、カオリはポケットから鍵を取り出しエンジンをかける。


 軽い振動が起きて、しばらく静止。


 正面にある計器類のメーターが一気に上がる。


 こうやって見ると、本当にただの車に乗っているようだ。


 外からモノを見ないと、こういう風に映るのか。


「どう?カオリ、ガルダストは・・・ビールで動きそう?」


 恐る恐る、カオリの顔を見てみるが・・・。


「!・・・すごいわ美里。なんなのこのエネルギーは?見て、出力メーターが6500を振り切っている!戦車にも匹敵しそうよ。」


 目を輝かして、カオリは満面の笑みで私の肩を揺らした。


 ちなみに、出力メーターが6500を振り切っているといわれても、基準が分からないから、すごいのか、どうなのかさっぱり分からない。


 まぁ、カオリが喜んでいるということは、すごいのだろうけど・・・。


「そ、そうなの・・・?」


 頭が揺らされ、揺れる世界の中で、私はおぼろげに声を出す。


「これなら、アルタスの野望も止められそうよ!・・・すごいわね。美里の世界は、こんなにも優秀なエネルギーが市販されているなんて・・・。いったい、何に使われているエネルギーなの?車?兵器?それとも、家電製品全般?」


「全国の労働者全てのエネルギー源です。」


 正直に答えてみた。


「へ?」


 そりゃ、理解できまい・・・。


「いや、何でもない・・・。それより、それはいいけど、これっぽちのエネルギーじゃ、元も子もないんじゃない?」


 持ってきたビールは10リットル。


 私の財産で買える限度がこの量だった。


 そして、それだけのエネルギーで動けるのは、カオリの機体一機が限界。


 さすがに、アルタスの野望を止めるには無理がある。


「ええ・・・確かにそうだけど、美里の世界にはガトトリノが市販されるぐらい、あるんじゃなかったの?」


 不思議そうなカオリの声。

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