坂口美里とガルダスト

 ・・・・・・それから、約20分の後。


「セット完了。」


 カオリの方の準備は、ものの5分で終わった。


 元から、化粧を落として服を着替えるだけの単純作業なのだ。


 たいして時間がかかるはずもない。


 問題は兄貴の方だった。


 何せ、私は自分の顔ならともかく、人の化粧なんてしたこと一度だってありはしない。


 ファンデーションを塗るのにも、一々手間取りながら、丁寧に丁寧に顔を仕上げていかなければならなかった。


「うわっ、本当に入れ替わったみたい。」


 もはや、化粧と衣装を変えるだけで、ここまで人が変わる人種も珍しいかも知れない。


「はぁ~・・・こんな格好学園祭以来だ。」


 ため息と共に、愚痴る兄貴。


 一瞬、カオリから兄貴の声が出てしまったことに、心からビックリしてしまった。


 それぐらい、二人の入れ違いは完璧だ。


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