坂口美里とガルダスト

 私は、必死にそんな言葉を飲み込みながら、本体についているダイヤルを調整する。


 声のトーンを調節して、その他の細かい声色設定を変えていく。


 そして・・・。


「ば~かで、わがまま~♪自分勝手~♪」


「終わったよ!いつまで歌ってるんだ、バカ兄貴!」


 思いっきり、けりを食らわした。


 ・・・が、見た目や声までもカオリだったため、あまり力を込めることが出来ない。


 くそっ!頭では分かっているのに・・・。


「すごいわ・・・声まで私そっくり。これが異世界の技術・・・。」


 驚く兄貴・・・もとい兄貴の格好をしたカオリ。


 まぁ、異世界の技術って言うか、あのおじさんが変なだけなんだけど・・・。


「すげ~な・・・さすが松本オジサン。こういう下らないものを作らせたら世界一だな?・・・奥さんが逃げるわけだよ。」


 カオリ・・・もとい、カオリの格好をした兄貴が感心した声を出した。


「ていっ!」


 もちろん、それは言ってはいけない言葉だったので、私は思いっきりけりを食らわす。


 今度は手加減なんてしない。


「いてぇ~。」


 気がついていると思うが、兄貴は松本おじさんの道具を借りて、今やすっかり声色までカオリそのものである。


 それが、兄貴のような口調で、膝を抱えてしゃがみこんでいる。


 ・・・・・・・・・・・違和感どころの話ではない。


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