坂口美里とガルダスト

「いい、兄貴。兄貴は今や完全にカオリになったの。だから、振る舞いや口調まで、完全にカオリにならなくちゃいけなくなったの!!分かった?」


「・・・・・・・・・」


「返事は?」


「・・・はい。」


「声が小さい!」


「ハイハイ!」


「ハイは一回!」


「調子に乗るな!」


 今度は私が思いっきりどつかれた。


「いてぇ~。」


「分かってるよ。これでも、演劇部にスカウトされたことがあるぐらいだぜ。まぁ、任しておけって・・・。」


 その自信はどこから来るんだよ?・・・それからお前が演劇にスカウトされた理由って、演技力よりも、その容姿が欲しかっただけだろうがよ・・・。


「ねぇ美里。私にはあの声が変わる道具はないの?」


 後ろから、カオリが声をかけてくる。


「あぁ、ごめん。アレ一個だけなんだ。松本オジサン、同じモノを二つと作らない人だから・・・。何でも、主人公は一人だけだとか何とか・・・。」


「は?」


 カオリが理解できないのも無理はない。


 あの発明は、「名探偵コ○ン」の蝶ネクタイを真似ただけなのだ。


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