坂口美里とガルダスト
「ううん。何でもない。」
「私ね・・・昔第12階級・・・あなたたちで言うところの庶民の家にホームステイに行ったコトあるの。」
「え?」
突然のカオリの独白。
貴族が庶民へホームステイに行く過程には何があったのかは分からない。
それでも、そのことがカオリの今の気持ちに影響を与えることは間違いないのだろう。
「後の後学のために庶民の生活を知っておくのも悪くないって・・・お父様がね。」
「ふ~ん、そうなんだ・・・。」
そうとしか返事しようがなかった。
「そこでも、今とまったく同じような感想を持ったわ。・・・・私の家族は決して仲の悪い家族ではなかったわ。朝食は毎朝家族でとることが家訓であったし、父も母も優しく厳しい人たちだったわ。」
「いい家族だね。」
素直な感想。
「ええ、私もそう思うわ・・・。でも、私はあの第12階級の家族を見たときも、そしてアナタの家族を見たときも同じ感想・・・口にできない嫉妬とも憧れとも言える気持ちを今持っているわ。」
カオリの言いたいことは、15歳の私には理解できない・・・。
「家の兄貴やお母さんが羨ましい?」
しかし、おそらくそういう事だと思って口にしてみる。