坂口美里とガルダスト

「もちろん・・・。素敵なお兄様ね。美里の魅力がどこから出てくるのか、とてもよく分かるわ。」


 そのように言われるととても照れる。


 私は照れ隠しのために、鳩にえさを与えながら口を開く。


「あのね・・・昔、漫画で読んだんだ。『人のもっとも幸福であることは無知でいること』なんだって。・・・世界は、知識があって聡明な人にほど厳しく、知識を深めることは決して幸福へと続く道ではなく、大量の知識とその聡明さの先に待っているのは、タダの空虚でしかない。らいらしいよ・・・私は、知識人じゃないから分からないけどね。」


 偉そうなコトを口にしてみるが、私自身それほど理解している言葉ではない。


「難しい考え方をするのね。」


「そうでないよ・・・それを言ったら、兄貴の方がすごいコトを言っていた。『それは、とてもよくできた解釈だ』・・・てね。」


「どういうことかしら?」


「つまり、私達の人生がこんなにも辛くてしんどいのは、私たちが聡明な知識人であるから・・・って言い訳ができる。私たちは、聡明な知識人であるが故に、辛い人生を歩まざるを得ない。なんだって」


 それが言い訳であることは間違いない。


 私自身、自分のコトを知識人だと思ったことはければ、聡明だとも思わない。


 ソウメイ・・・って意味は良く分からないけど・・・。


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