坂口美里とガルダスト
「そ・・・そうかい。まぁ、この指輪は本物だし、盗難届けが出ている代物でもないからな・・・。ハイよ50万。が・・・頑張るんだよ。」
おじさんの態度はあからさまに懐疑的なものであったが、とりあえずこの寸劇のおかげで、私たちは50万を手に入れた。
「いやぁ~迫真の演技だったね・・・私、案外演劇の才能あるかも・・・将来は、そっちの道に進んでみようかな?」
50万なんて大金を持ったら、確実に手が震えて歩けなくなってしまうから、お金をすべてカオリに預けて、私たちは街を歩く。
「いや・・・私は、ただの迫力押しだったと思うわよ・・・。それより、どうしてこんな安物の指輪なの?もっと大きくて豪華なモノはたくさんあったのに・・・。」
安物って?・・・それでも、50万の代物でしょう。お姉さん・・・。
「あまり、豪華なものを持って行ってもお店自体にそこまでのお金がないよ。質屋は銀行じゃないんだから・・・それに、100万を越すと税金のなにやらで、余計面倒な事になるんだって。私にしてみたら、50万も本当はダメかと思ったよ。」
「ふ~ん。けっこう、こっちの世界も面倒なのね?」
逆だと思う。
こっちの世界だからこそ面倒なのではないか・・・?
「さて、これで軍資金も集まったし、これで町中の酒屋やスーパーからビールを・・・。」
買い占めるぞ~・・・と拳を振り上げようとした瞬間。
「それより、何か食べましょう?朝食を抜いたせいか、すごい空腹感だわ。」
カオリの言葉がかぶさった。
確かに、それは一理ある。
腹が減っては戦は出来ぬ。の精神だ。
「そうだね。それじゃあ、とりあえずマックにでも入ろうか?」
本当は、先ほど換金したばかりの50万を使って、豪勢に食べてみたかったのだが、アレはあくまでガルダストを動かすための軍資金である。
私のポケットマネーで食事をしようと思ったら、マックが限界値。