坂口美里とガルダスト

「マック?」


「マクドナルドの略だよ。ハンバーガーが食べられる場所。まぁ行ってみれば分かるよ。」


 百聞は一見にしかず。


 というよりは、ただ説明するのが面倒だから、実際に見せてしまったほうが早い。


 私は、カオリの手を引いて、とりあえず手近なマクドナルドに入ると、ハンバーガーセットを二つ注文した。


 幸いお昼時には遠く、朝食には遅い時間。マバラな店内で、私たちは二階の窓際という最高の席を確保することに成功する。


「食べ方分かる?」


 ハンバーガーを手にしながらカオリに聞いてみる。


「一応は。これに近い食べ物なら、ホームステイの時に食べたわ。」


 ハンバーガーの包み紙を綺麗にはがしながら、カオリが口にする。


 はがした包み紙を綺麗にたたみ直してしまうあたりに、カオリのお嬢様気質を感じてしまうが、まぁ、合格点だろう。


「そりゃ、あの世界にもファーストフードぐらいは存在しているだろうしね。」


 実際、あちらの世界で何度かそれらしき店は見かけた。


 正直、文字がまったく読めないから、何のお店かまでは判断しなかったが・・・。


「まぁ、カオリが普段口にしているものよりは、足元にも及ばないだろうけど、ないよりはマシだと思って、我慢してよ。」


「そんなコト言ったら、これを作ったシェフに悪いわ。」


 ハンバーガーを咀嚼しながらのカオリの言葉。


 そんなコトをさらりと言ってしまうあたり、やっぱりカオリはお嬢様だと思う。


 でも、これってシェフが作ったものなのかなぁ?


 そんなコトを考えながら、私がハンバーガーを口にすると・・・。


「あ・・・やっぱり、あまり美味しくないわね。これ・・・。」


 ハンバーガーを飲み込んだカオリが小さくもらした。


 思わず笑ってしまう私。


 それでも、カオリはハンバーガーセットをすべて平らげたのだから、偉いと思う。


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