Birth
「悪りぃ… 苦しかったか?」




少し息を乱してうつむく私の頬を、そっと撫でる隼人。




「大丈夫…」




好きだとハッキリ意識してしまうと、何か恥ずかしくて、顔が上げられない。







「ごめんな… もう、ホッペにしか、しないから。」




「えっ?」





『どうして?』という言葉を、思わず飲み込んだ。





だって、見上げた隼人の目が、あまりにも切なくて、寂しそうだったから…







「引き止めて、悪かったな。気をつけて帰れ。」




隼人はそう言って、ドアを開けた。





私は何も言えず、そのまま出口へ向かう。






廊下に足を踏み出した時、振り返った。




でも隼人は一瞬重なった視線をすぐに外し、静かにドアを閉じた。








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