Birth
「けなげだねー…」




成海がつぶやく。




「何よ… 先生も帰れば?」



私は下を向いて言った。



「更衣室は?」



「忘れ物… ないから。」



「二人にしてやろうと、したんだろ? それとも… 仲いいとこを見てるのが、辛かったとか。」




そう言われて、顔を上げて成海を見た。





「せつないって… 顔に書いてある…」




彼の声は、からかうでもなく、面白がるでもなく…


優しかった。





その言葉に、私は返す言葉がなかった。




だって… 図星だったから。





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