Birth
そして、唇の柔らかい感触を感じたのは…




 頬だった。






「えっ?…」




私が目を開けると、両手を壁についたままの隼人が、ニヤリと笑った。






「…これで…よかったの?」



拍子抜けした私に、



「バカか! あんなに力入れられたら、全身で『イヤです!』って言ってるようなもんだ。
無理矢理する趣味は、ねーからな。 分割にしてやるよ。」




「ぶ、分割?」




「そ。 唇の分を、ほっぺで分割な。」





新しいゲームを見つけた子供のように、楽しそうに笑ってる。






…とんでもない奴に、借りを作ってしまった…








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