かっこ仮。の世界。


それから暫く清明は透理の様子を伺いつつ、心地良い静寂に浸っていたのだが。


この時代、日暮れ前イコール夕餉の時間。


「透理!夕餉の支度はどうした⁉」


物理方式を無視して突如現れた玉若に、それはあっさりと打ち砕かれた。


ぱっと目を開いた透理が、あわあわと清明に助けを求める視線を送る。


その気持ちは清明にもわかる。


玉若は怒らせると本当に怖い。


「あぁ~。玉若?あまり透理を責めないでおくれ?透理は自分の力を正しく使う努力をしていたんだ」


若干弱腰な清明の弁明に、玉若はにっこり微笑んだ。


「それとこれは別じゃ。人にとって食事は生命活動の最重要項目であろうが!修練だのなんだの前に、料理を覚えるのが先であろう!」


すぱっとぶった切る玉若様。


それは確かにその通りと言えばその通りなのだが。


なんだろう?


透理は青ざめつつも不思議に思う。


なんでこんなに玉若は人間に詳しいのだろう、と。




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