ずっとそばにいたのに.......
目まいがする。

今、目の前で起こっていることは現実なのかな。

お願いだから、悪い夢なら早く覚めて.........



怖いけど、ドアの隙間から少しだけ部屋の中を覗いてみた。

これが現実じゃなきゃいいと願いながら。

でも目に入ったのは残酷すぎる光景で、私は思わずバッグを落としてしまった。




その音に気付いて、二人が振り向く。

航佑と目が合った瞬間、私は走った。

涙で曇って、前が全然見えないのに。

おめかしして履いてきた、ヒールの高い靴が痛いのに.........




すぐに航佑が飛び出してきた。

追いかけてくるのも、追い付かれるのもわかってたから、泣くのをこらえて隠れた。

会いたくなかったから。

言い訳を聞きたくなかったから。

真由子さんに抱きつかれていた腕で、今は触れられたくなかったから。
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