笑ってくれますように
教室を見渡しても、瀬越の姿はない。
「ねえ、瀬越知ってる?」
「あいつなら、たった今、教室出て行ったぞ。」
「ありがとう。」
「竜哉探してんのか?だったら、あいつは多分ーー……」
瀬越と仲の良い男の話を頼りに、教室を出て、ある場所に向かった。
「ここって……」
教えられたとおりに来た場所は、校舎裏にある大きな桜の木。
まだ花が咲くには早すぎる時期。
まだ冬の寒さが残る中、その桜の木は茶色の幹と枝が剥き出し状態--つまり裸の状態だった。
そして、そこには、その木を見上げて立っている瀬越がいた。