ロング・ディスタンス
「私は……」
 栞は意を決して口を開いた。
「私はもうあなたとは会いません! もう、別れましょう」
「栞。お前、一体どうしたというんだ」
 神坂は自分の耳を疑った。
「もう、こんな関係、終わりにしたいんです」
「何故だ。俺たちは今まで上手くやってきただろう?」
「こんな不毛な関係、もう嫌なんです」
「栞」
 神坂は言葉を選びながら彼女に語りかける。
「確かに俺はお前を辛い立場に置いているし、そのことは俺も申し訳ないと思っている。でも、俺はお前のことをちゃんと思っているんだ。お前は俺にとってかけがえのない存在だって前から言ってるだろう? 俺には帰る場所があるとお前は言うけど、お前と家族は別物だ。お前は家族の代用じゃないし、家族はお前の代用じゃない。比べる対象じゃないんだぞ!」
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