ロング・ディスタンス
 彼女はタクシーに乗って、今度は近所の医院よりも大きい市民病院に行った。総合病院といっても職場の大学病院は遠かったので市民病院を選んだ。もしかしたら単なる風邪ではなく流感にかかっているのかもしれない。

 診断の結果、栞は風邪でも流感でもなくウィルス感染症の一種にかかっていることが判った。あまりに体力が減退していたので、彼女はそのまま診察室で点滴を受けることになった。そして、医師からすぐに入院をすることを命じられた。

 病状は思ったよりも重篤で、治療は長期に渡ることが予想された。
 職場では病気療養を理由とした長期休暇を取ることになった。数か月間の不在が見込まれるため、栞のポストを埋めるために派遣会社から代替職員が雇われることとなったが、なにしろ正規職員でなければわからない専門性を必要とする業務もあるので、医療事務部は混乱していた。
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