ロング・ディスタンス
「もしもし神坂です」
数コールで彼が出た。
「もしもし、先生。私です」
「ああ、栞か。市民病院に入院したんだってな。大丈夫か」
栞はメールで自分の状況を報告していた。
「メールにも書きましたけど、ここの先生から感染症の一種にかかっているって診察されました。治療は長くなるだろうって」
「そうか……」
「先生もウィルス感染症についてはご存知でしょう。私、いつこれが治るのかなとか、このままずっと治らないのかなって不安なんです。ネットで調べたら死に至ることもあるって書いてあったし」
「そんなに心配することないさ。お前がちゃんと回復することは医者の俺が保証する。今はとにかく治療に専念することだ」
「ねえ。先生は内科でしょう。私、ここからうちの病院に移って、先生に主治医として担当してもらいたいんです」
不安な気持ちが栞にわがままなお願いをさせる。
けれど神坂の返事は色よいものではなかった。
「えーっ。俺に主治医になってもらいたいって? 何を言ってるんだ。病気ってのは、基本どの医者でも治療できるんだぞ」
「でも、私、先生に診てもらえたら安心するんです!」
「担当医っていうのはお前の都合で決まるもんじゃないんだ。第一、お前がうちの病棟に来て俺と接触していたら、周りに関係を気付かれかねないだろう。俺たちの関係はまだ正式なものじゃないんだぞ。せっかく市民病院で診てもらってるんだから、そこでしっかり治療しろ」
「そう……。やっぱりダメなんですね」
栞は落胆する。
彼は公の場で自分と居合わせたくないのだ。
「セカンドオピニオンくらいなら俺が言ってやるから」
「ええ」
数コールで彼が出た。
「もしもし、先生。私です」
「ああ、栞か。市民病院に入院したんだってな。大丈夫か」
栞はメールで自分の状況を報告していた。
「メールにも書きましたけど、ここの先生から感染症の一種にかかっているって診察されました。治療は長くなるだろうって」
「そうか……」
「先生もウィルス感染症についてはご存知でしょう。私、いつこれが治るのかなとか、このままずっと治らないのかなって不安なんです。ネットで調べたら死に至ることもあるって書いてあったし」
「そんなに心配することないさ。お前がちゃんと回復することは医者の俺が保証する。今はとにかく治療に専念することだ」
「ねえ。先生は内科でしょう。私、ここからうちの病院に移って、先生に主治医として担当してもらいたいんです」
不安な気持ちが栞にわがままなお願いをさせる。
けれど神坂の返事は色よいものではなかった。
「えーっ。俺に主治医になってもらいたいって? 何を言ってるんだ。病気ってのは、基本どの医者でも治療できるんだぞ」
「でも、私、先生に診てもらえたら安心するんです!」
「担当医っていうのはお前の都合で決まるもんじゃないんだ。第一、お前がうちの病棟に来て俺と接触していたら、周りに関係を気付かれかねないだろう。俺たちの関係はまだ正式なものじゃないんだぞ。せっかく市民病院で診てもらってるんだから、そこでしっかり治療しろ」
「そう……。やっぱりダメなんですね」
栞は落胆する。
彼は公の場で自分と居合わせたくないのだ。
「セカンドオピニオンくらいなら俺が言ってやるから」
「ええ」