ロング・ディスタンス
 神坂から届くメールが一日の中で最も待ち遠しいことだったが、その間隔もだんだん開いてきた。
 寂しさに耐えかねて自分からメールを送ると、何時間もしてやっと彼から返信が送られてくる。最初の頃のメールでは体調を気遣う温かい言葉が書かれていたが、途中から内容もなおざりになってきた。最近では、メールを送っても返信なんか戻ってこない。

 果てしなく続く時間の中における最大の関心事がこれなのに、当の相手からは音信がないから、栞はどうしようもない焦燥感にかられる。肌身離さず身に着けている魔法の指輪を眺めてみるけれど、前ほど幸福な気持ちになれない。二人の絆を示す大切な宝物であるはずなのに。
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