ロング・ディスタンス
春陽
 栞が感染症を患っているため、成美は病室へ見舞いに来ることはできないが、ちょくちょく携帯に電話をかけてきてくれる。成美と話すことで不安な心が和んだ。

 栞は成美に神坂と別れたいきさつを話した。
 成美は心の中で、あの男ならさもありなんと思ったが、それを口には出さなかった。彼女はただ病身の上に失恋で傷ついた友人を慰めるだけだった。栞が散々自分を責めるのを根気よく聞き、彼女を励ました。まずは気持ちが元気にならないと体も良くならない。
 
 栞がか細い声で「こんな私と友達でいてくれてありがとう」と言うと、成美は優しい声で返した。「バカだね。あんたは何も悪くないんだから、そんなこと言う必要ないよ」と。
 友人が自分のことを「こんな私」だなんて言うと、とても切なくなってしまう。今すぐ病院に駆けつけて彼女のことを抱きしめてやりたかったが、それができないのがはがゆい。
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