ロング・ディスタンス
「じゃあ、元気で」
 長濱は会話を終わらせようとする。
「先生、あの」
 長濱が言い終わらぬうちに栞がたずねる。
「私、先生の所に遊びにいってもいいですか」
 我ながらとんでもなく厚かましいことをたずねると栞は思った。
「俺の所? 新しい赴任地のこと?」
 長濱が驚いた表情でたずねる。
 栞が首肯する。
 彼女は顔を上げられない。どんな顔してそんなことをたずねていいかわからないからだ。今更そんなことを言われても彼が困惑するだけだということは、百も承知だ。
「あそこは町の埠頭から連絡船で2時間近くかかる離島なんだけど」
 長濱が言う。
 そういう言い方をするということは、やはり栞には来てほしくないということなのだろうか。
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