ロング・ディスタンス
「明るいね」
太一はお天気のことを話す。ありがちな話題だ。
青い空を海鳥が弧を描いて飛んでいる。
「ええ。気持ちいいです」
海なんか見たのは久しぶりだ。
寄せたり引いたりする波を見ていると、いつの間にか時間が経っていく。
潮が騒ぐ音のお陰で言葉なんかなくても間がもつけれど、栞はここへ来た目的を思い出し、思い切って切り出す。
「先生。私、まだ先生にちゃんと謝っていませんでした」
「謝る?」
「はい。私、あの時先生を傷つけたんじゃないかと思います。だから、ごめんなさい」
あの時というのは栞が太一を袖にした時、そして喫煙所で鉢合わせをした時のことだ。
「うん。なんかね、薄々気付いてたんだ。俺といる時の君は、見えないバリアを張っているって感じだった。『本当は私はあなたのものじゃないのよ』っていう無言のメッセージを感じてたよ。この子はどういうつもりで俺に会うんだろうって、君の心理をはかりかねていたよ」
「……そうだったんですか」
言葉ではどんなことを言っても、やはり表情や振る舞いに感情が表れてしまうものだ。
「あの時は神坂先生から気をそらしたかったんだね。それで俺と」
太一は耳に痛い事実をさらりと口にする。
太一はお天気のことを話す。ありがちな話題だ。
青い空を海鳥が弧を描いて飛んでいる。
「ええ。気持ちいいです」
海なんか見たのは久しぶりだ。
寄せたり引いたりする波を見ていると、いつの間にか時間が経っていく。
潮が騒ぐ音のお陰で言葉なんかなくても間がもつけれど、栞はここへ来た目的を思い出し、思い切って切り出す。
「先生。私、まだ先生にちゃんと謝っていませんでした」
「謝る?」
「はい。私、あの時先生を傷つけたんじゃないかと思います。だから、ごめんなさい」
あの時というのは栞が太一を袖にした時、そして喫煙所で鉢合わせをした時のことだ。
「うん。なんかね、薄々気付いてたんだ。俺といる時の君は、見えないバリアを張っているって感じだった。『本当は私はあなたのものじゃないのよ』っていう無言のメッセージを感じてたよ。この子はどういうつもりで俺に会うんだろうって、君の心理をはかりかねていたよ」
「……そうだったんですか」
言葉ではどんなことを言っても、やはり表情や振る舞いに感情が表れてしまうものだ。
「あの時は神坂先生から気をそらしたかったんだね。それで俺と」
太一は耳に痛い事実をさらりと口にする。