ロング・ディスタンス
 船が島に着くと、先月のように太一が桟橋まで迎えにきてくれていた。
 久しぶりに会う彼はちょっとだけ日焼けをしている。
 彼は栞の荷物を受け取ると、車の後部座席にそれを入れた。

「いやぁ。うっかり今日だってことを忘れるとこだったよ。児島さんが向こうを出る時にメールをくれて良かった」
「そうだったんですか」
 こっちはこの日を今か今かと待ちわびていたのに、いくら仕事が忙しいとはいえ、彼にとって栞の訪問がその程度の認識なのがちょっぴり寂しい。
 メールでも打ち合わせていたが、今夜は太一の同僚の辻堂の家に栞も招待されている。辻堂は面倒見のいい先輩で、新入りの太一を自宅に招いては酒と食事をふるまっている。
「辻堂先生は6時半ぐらいに来てくれって言ってるから、それまで俺んちで時間をつぶそう」
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