ロング・ディスタンス
 その刹那、栞は背後から太一に抱きつかれた。
 太一は彼女を強く抱きしめて、その頬を彼女の頭に当てる。
「先生?」
 一瞬、何が起こったかわからなかった。
 それまで、太一が自分の感情を露わにすることはなかったから。
「ありがとう。俺、児島さんを好きになって良かった。俺、脚を大事にしてるから安心して」
 彼はなおも彼女の体を抱きしめ続けている。
 彼に抱きしめられて、彼女の体も熱くなってくる。
 彼の体に触れたのは初めてのことだ。

 顔を見合わせた二人は、自然に心が赴くまま唇を重ねた。
 最初はついばむような口づけをし、それから互いの舌をからませ合った。
 太一は栞を砂浜に寝かせると、右手で彼女の左手を握り、唇の愛撫を続ける。
 彼は何度も彼女の口腔をなぞり、内部を味わい尽くした。
 彼女は長い黒髪が砂だらけになるのも厭わずに、彼の口づけに身を任せていた。

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