ロング・ディスタンス
 何の届け物だろうと思って玄関のドアを開けると、配達員が大きな長方形の箱を渡してくる。伝票を見ると太一からだった。
 それを見て栞は判った。
 今日は彼女の誕生日だ。
 彼は彼女の誕生日を覚えていてくれたのだ!
 以前、何の気なしに自分の誕生日を話したことがある。

 部屋に戻って箱を開けると、きれいにラッピングされた白いユリの花束が出てきた。小さなカードが添えられていて「誕生日おめでとう」と書かれている。顔を近づけると、花の甘い香りが漂ってくる。昨年、二人が初めてドライブデートをしたユリ園を思い出す。

 栞の胸に甘酸っぱい思いが広がる。
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