ロング・ディスタンス
 夜になってから雨脚が強まってきた。
 閃光が走ったと思ったら、ゴロゴロと雷鳴の轟く音が聞こえた。
「天気がひどくなってきたな」
「天気予報は台風が来るとは言ってなかったんですけどね」
 もしそうだとしたら来島を延期していただろう。
「島の天気は予測しづらいんだ」
 風も強まってきて、外の樹木がバサバサいう音が聞こえてくる。

 太一は食事を終えた。
「わあ、すごい雨!」
 窓の外を見るとどしゃぶりの雨が降っている。
「ホントだな。こりゃ、さっき俺が帰ってきた時以上のひどさだ」
「車、出せそうですか?」
「出せることは出せそうだけど、視界が悪そうだな」
「もうちょっと待ってから旅館に行きますよ。チェックインの時間、だいぶ過ぎちゃったけど、電話で話したらわかってくれるでしょう」
「うん」
< 234 / 283 >

この作品をシェア

pagetop