ロング・ディスタンス
 深夜、栞は雷鳴を聞いて思わず悲鳴を上げた。
 太一がリビングにやってきて様子をたずねた。
 彼がおびえる彼女に胸を貸してから、二人は体を重ねたまま離れられなくなった。
 自然な感情の流れに任せて、二人は互いの体を求め合った。
 暴風雨の音が、彼らの愛し合う声と衣擦れの音を掻き消していた。

 朝になると、昨夜からの暴風雨が嘘みたいにやんでいて、窓から明るい朝日が差し込んできた。小鳥のさえずりも聞こえる。
 まどろんでいる栞は白い肩と胸元を肌掛けからのぞかせている。その横では、太一が眠っている。彼は腹ばいになって広い背中を天井に向けている。
 目を覚ました栞が太一に寄り添うと、彼はたくましい両腕で彼女を抱き寄せ、髪に口づけをした。
< 236 / 283 >

この作品をシェア

pagetop