ロング・ディスタンス
「いいお天気になりそうですね」
 嵐は去った。
 二人は窓の外を見ている。
「今日はどこかへ連れていってくれるんですか」
「さあ、どうしようかね。せっかく君がいるんだから外出はしないで、船の時間まで昨日の晩の続きをしてもいい」
 太一がおどける。
「もう、太一さんたら。こんなに晴れているんですよ」
「どこかへ行かないと損ってか? でも、この島には他にもう開拓するとこなんてないぜ。雨がひどくて君を家に引き留めることもあるけど、天気が良くてもそうすることがある。昨日の夜遅くまで労働に勤しんでいた俺を休ませてほしいんだ。それが後者の理由」
「そうでしたね。ごめんなさい、気が利かなくて。まだ疲れているならゆっくり休んでください。なんならもう一眠りしてくださいな。私もここでのんびりさせてもらいます」
「一つお願いがある」
 ソファに座っている太一が栞の膝を指差す。
「今度はそっちの枕で休みたいんだ」
「あら、ぜいたくな人ですね。いいですよ。どうぞ」
 栞がソファに座ると、太一が自分の頭を彼女の膝の上に置いた。
「ああ、気持ちがいい。お陰で昨夜の疲れがとれそうだ」

 彼女は細い指で彼の髪を優しく撫でている。
 午前中の暖かい陽光に包まれて、いつの間にか彼は寝息を立てていた。
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