ロング・ディスタンス
 小ぎれいなアパートの前に着いた。
 太一の住む一階の角部屋には明かりが点いている。彼はもう帰宅している。
 玄関の所で呼び鈴のベルを鳴らした。
 中からは何も反応がない。もしかしたら、彼は帰ってからすぐシャワーを浴びているのかもしれない。

 腕にレジ袋の持ち手部分が食い込んでいるので、早く荷物を置かせてもらいたい。勝手に上り込むのは忍びないけれど大目に見てもらおうと栞は思った。
 幸い、ドアノブを押すと玄関のドアに鍵はかかっていなかった。
「太一さーん。こんばんはー。お邪魔しまーす」
 栞は一応、声を掛けて玄関に入った。


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