ロング・ディスタンス
「う、うわー！　栞ちゃん、ちょっと待った！」
　太一は栞の姿を確認すると叫び声を上げた。
　彼はシャワーを浴びた直後らしく、髪が濡れていて上半身が裸だ。

「な、何これ？　どういうこと？」
　栞は呆然としてたずねた。
「あの、これは誤解だって！」
　太一が美菜の体を押しのけこちらに向かってくる。
「信じられない！　人を呼んでおいてどういうつもり!?」
　そう言い捨てて栞はアパートを飛び出した。
　レジ袋はそこに捨ててきた。

　彼女はレスポのウィークエンダ―を肩に掛け、小走りで元来た道を引き返す。
　背後で太一が「ちょっと待ってくれ！　誤解なんだー！」と叫んでいるのが聞こえる。彼はTシャツを羽織り、髪が濡れたまま後を追ってくる。
　彼女は彼に追いつかれまいと住宅地の路地裏に逃げ込んだ。暗闇の中、民家の物陰に潜んで、彼女を探し回っている太一を撒いた。
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表紙・目次

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