ロング・ディスタンス
 数十分後、栞と太一の二人は駅前のコーヒーショップで向かい合わせになって座っていた。彼女は彼の言い分をじっと聞いていた。

「なんだかまだスッキリしていないみたいな感じだね」
 一通り話し終えた太一が栞の様子を見てたずねる。
「スッキリしないっていうか……」
 栞はうなだれている。
「スッキリしないっていうか何?」
「あなたの言っていることはわかりました。でも……」
「俺の言うこと、信じきれないの?」
 太一の問いに彼女は首を横に振る。
「じゃあ、君は何に引っ掛かっているの?」
「私が言いたいのは、そもそもあんな人からご飯の差し入れなんて受け取らないでほしかったってことなんです。あなたに気がある人に期待を持たせるようなことなんてしてほしくないんです」

 前に太一から「我慢をしていないか」とたずねられたことがある。その時は自覚していなかったけど、やはり美菜という娘が彼に馴れ馴れしく接してくるのは栞としては面白くないことだった。遠慮をして自分の素直な気持ちを言えなかった。
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