ロング・ディスタンス
悲愴
木曜の夜。栞は市内のハイグレードなシティホテルにいた。ここ数年、彼女と神坂はこのホテルで逢瀬を重ねてきた。いつも時間差で部屋に入り、時間差で出ていく。
平日の夜に会うことが多かったが、神坂の勤務がある日は土日にも会った。仕事のある日でないと、彼の家族に怪しまれるから。もちろん、外で会うことなど皆無だ。限られた時間に密室でのみ顔を合わせる、そんな特殊な関係。
栞だってもちろん、そんな不毛な関係に切なさを感じていたけれど、神坂との関係を断つことはできなかった。会えば憂いの全てを忘れた。
彼女にとって彼は、生まれて初めて深い関係を持った男性なので、彼の存在が全てだったのだ。同世代の男の子にはない包容力、そしてあの世代の男ですらなかなか持っていない男としてのスケールの大きさに惹かれていた。
平日の夜に会うことが多かったが、神坂の勤務がある日は土日にも会った。仕事のある日でないと、彼の家族に怪しまれるから。もちろん、外で会うことなど皆無だ。限られた時間に密室でのみ顔を合わせる、そんな特殊な関係。
栞だってもちろん、そんな不毛な関係に切なさを感じていたけれど、神坂との関係を断つことはできなかった。会えば憂いの全てを忘れた。
彼女にとって彼は、生まれて初めて深い関係を持った男性なので、彼の存在が全てだったのだ。同世代の男の子にはない包容力、そしてあの世代の男ですらなかなか持っていない男としてのスケールの大きさに惹かれていた。