ロング・ディスタンス
ある日、給湯室でやかんを火にかけていると、泉が背後から栞に声を掛けてきた。
「児島さん。お湯、すみません。私の仕事なのに」
ポットのお湯を補充するのは新入りの職員の仕事である。泉が来る前は、それまで医療事務部で一番年少だった栞の役目だった。
「いいのよ。こういうのは気がついた人がやればいんだから」
「すみません。職場の人で、児島さんだけはそういうの手伝ってくれますよね」
「そんなことないよ」
「そんなことあります」
その言い方に、栞の口元がほころぶ。
「あの、あとはあたしがやりますから、児島さんは席に戻ってください」
「いいって、いいって。浅羽さんこそ忙しいでしょ。今、患者さんのレセプトまとめてるとこじゃない」
「今は大丈夫です」
笛吹ケトルがシューシューという音を出し始めた。
泉は素早くコンロの火を消した。「熱いから気を付けて」と栞が言う。
「児島さん。お湯、すみません。私の仕事なのに」
ポットのお湯を補充するのは新入りの職員の仕事である。泉が来る前は、それまで医療事務部で一番年少だった栞の役目だった。
「いいのよ。こういうのは気がついた人がやればいんだから」
「すみません。職場の人で、児島さんだけはそういうの手伝ってくれますよね」
「そんなことないよ」
「そんなことあります」
その言い方に、栞の口元がほころぶ。
「あの、あとはあたしがやりますから、児島さんは席に戻ってください」
「いいって、いいって。浅羽さんこそ忙しいでしょ。今、患者さんのレセプトまとめてるとこじゃない」
「今は大丈夫です」
笛吹ケトルがシューシューという音を出し始めた。
泉は素早くコンロの火を消した。「熱いから気を付けて」と栞が言う。