ロング・ディスタンス
「へえ、それはありがたい制度ですね」
「本当に。そういうこともあって医学部に入ろうと決意したんですよ」
「そうですか。でも」
栞が言う。
「本当に自分の好きな道にこだわって進むって素晴らしことですけど、なかなか実行できないことですよね。人には色々な制約があるから」
栞は男性のように仕事で何かを達成したいというわけではない。もちろん、医療事務の仕事はそつなくこなしていければいいとは思っているけれど、食べていければ十分なのが本音だ。本当に願うことは、やはり女として愛する男性と添い遂げたいということなのだが、今の恋ではそれは叶わぬ願いだった。自分の一番望むことが一番叶わないことである時、人はどうしたらいいのだろうか。それをすっぱり諦められるほど、人の感情はかんたんにはいかない。
「そうですね。普通、人はいつまでも夢を追って生きてはいられないし、どこかで折り合いを付けなきゃいけない時もありますよね。格闘家にはなれなかったけど、次の夢を叶えられた俺は幸せなのかもしれません」
長濱は遠く見ながら日本酒を傾けている。
「本当に。そういうこともあって医学部に入ろうと決意したんですよ」
「そうですか。でも」
栞が言う。
「本当に自分の好きな道にこだわって進むって素晴らしことですけど、なかなか実行できないことですよね。人には色々な制約があるから」
栞は男性のように仕事で何かを達成したいというわけではない。もちろん、医療事務の仕事はそつなくこなしていければいいとは思っているけれど、食べていければ十分なのが本音だ。本当に願うことは、やはり女として愛する男性と添い遂げたいということなのだが、今の恋ではそれは叶わぬ願いだった。自分の一番望むことが一番叶わないことである時、人はどうしたらいいのだろうか。それをすっぱり諦められるほど、人の感情はかんたんにはいかない。
「そうですね。普通、人はいつまでも夢を追って生きてはいられないし、どこかで折り合いを付けなきゃいけない時もありますよね。格闘家にはなれなかったけど、次の夢を叶えられた俺は幸せなのかもしれません」
長濱は遠く見ながら日本酒を傾けている。