ロング・ディスタンス
焦燥
 高校時代からの親友の栞と成美。成美の結婚式以来、最近の二人は関係を回復させていた。成美は実家を出て、夫の光太郎と一緒に市内のアパートで暮らしている。甘い新婚生活のスタートだ。
 二人はちょくちょく、電話で話をしている。成美は、この前の食事会でのハプニングを聞いていた。6月下旬のある晩も、二人は携帯で話をしていた。

「初対面でお酒こぼしちゃったんだ。そりゃあ、なかなか印象的な出会いだったよね」
 成美が電話口で笑いながら言う。
「そう。もう、びっくりしたわよ!」
「でも、悪い人じゃないかもよ。その何とかっていう新人のお医者さん」
「長濱先生。まあ、あの人はいい人そうよ。真面目そうだし、外科部の看護師さんたちとの関係も良さそうだし。でも、私が求めているのはそういうことじゃないの」
「彼はタイプじゃないってことね。あんたが求めているのって何?」
 成美が栞にたずねる。
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