ロング・ディスタンス
 成美は後輩の泉のようなことを言う。一度試してみろということなのだが、栞は試したところで何も変わらない気がする。成美としては何とかして親友の軌道を修正したいようで、その気持ちは栞にもわかるのだが、いかんせん気が引ける。デートをするのはいいのだが、そのことで相手が期待を持ってしまったら重いのだ。
 本当は、自分から自然に好感を持てるような人が現れてほしい。人から何かを押し付けられるとうっとうしく感じる。

「ごめん、成美。気持ちはうれしいんだけどその話にはのれないよ。今はまだそんな気分じゃないんだ」
「そう」
 成美が寂しそうにあいづちを打つ。
「ごめんね」
「まあ、あんたが乗り気じゃないなら無理には誘わないよ」
「うん」
 成美は静かに電話を切った。
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