ロング・ディスタンス
 電車に揺られながら、栞は「これでいいのだ」と思った。神坂に会いたい気持ちが抑えられない。この前会えなかったから、もう一か月近く会っていないのだ。誘惑に負けた自分は弱いのかもしれないけど、仕方がないのだ。自分はこういうふうにしかなれないのだ。もうこういうふうにしか生きていくことができないのだ。
 もしかしたら今が腹をくくった瞬間かもしれないと栞は思った。こうなったら徹底的に堕ちるところまで堕ちてやろうと思った。後のことなんか知らない。今のこの自分の気持ちに正直に生きようと思った。この恋が続く限り付き合っていこう。いつか終わる時があればその時はその時だ。あれこれ迷っている方が心に良くないではないか。
 栞はそう自分に言い聞かせた。
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