ふたりで過ごす夜のこと



わたしの髪の毛を撫でる祐李の指はいつも優しくて、大きな手のひらには安心感を覚える。


「ねえ、祐李ー」


「んー?」


「ふふふん、きもちいいー」


「それは良かった」


満足げなわたしの表情が後ろからでも分かったのか、祐李の優しい返事が聞こえた。


今のわたしはきっと、祐李という飼い主に手懐けられている柴犬だ。


街中で、祐李はよくわたしに「ふらふらしないの」って言いながら手を繋ぐけれど、祐李に守られてるって分かってるから私はふらふらとさまようことが出来るんだよ。


手を繋がなくても離れないって、最後は祐李の元へ必ず帰るってことが決まってるからひとりで歩く事が出来る。


裏を返せば、わたしは祐李がいないと、帰る場所がないと、ひとりで歩くこともできないんだよ。


「ねえ、祐李ー?」


「んー?」




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