鬼神姫(仮)
「いえ……何でもありません」
雪弥は小さく首を振った。軽く纏めただけの髪がはらりと揺れる。雪弥は各々勝手にしている三人を眺めた。
「あのさ」
すると、不意に銀が口を開いた。散らかった煎餅のカスに漸く気付いたのか、指でそれを集めながら、続ける。
「俺、過去の鬼神姫達の話を知らねぇんだけど。教えてもらえないか?」
まさか、銀がそんなことを言ってくるとは思わなかった。護るとは決めたものの、そこには興味はないと勝手に思い込んでいた。とはいえ、雪弥も詳しく知る話ではなかった。
ただ、嘗ての鬼神姫である葛姫が、彼らの先祖である番人となる人間の頼みを聞き届けた。その為に力を与えた。それしか知らなかったのだ。
遠い昔、緋川に尋ねたことはある。だけれど、詳細を教えてもらうことは叶わなかった。聞かせたくない話というわけではなかった。ただ、知るまでもないといったふう。
しかし、本来のところは聞かせたくなかったのだろう。
その末路が悲惨なものであったから──。
番人の一人に葛姫が葬られるという事実。
「申し訳ないのですが、私も詳しくは……」
「あー、ええとさ」
銀が雪弥の言葉を遮り、頭をがしがしと掻きながら言う。
「何です?」
自分から訊いておいて言葉を遮るなど。雪弥は少し眉をしかめて返す。
雪弥は小さく首を振った。軽く纏めただけの髪がはらりと揺れる。雪弥は各々勝手にしている三人を眺めた。
「あのさ」
すると、不意に銀が口を開いた。散らかった煎餅のカスに漸く気付いたのか、指でそれを集めながら、続ける。
「俺、過去の鬼神姫達の話を知らねぇんだけど。教えてもらえないか?」
まさか、銀がそんなことを言ってくるとは思わなかった。護るとは決めたものの、そこには興味はないと勝手に思い込んでいた。とはいえ、雪弥も詳しく知る話ではなかった。
ただ、嘗ての鬼神姫である葛姫が、彼らの先祖である番人となる人間の頼みを聞き届けた。その為に力を与えた。それしか知らなかったのだ。
遠い昔、緋川に尋ねたことはある。だけれど、詳細を教えてもらうことは叶わなかった。聞かせたくない話というわけではなかった。ただ、知るまでもないといったふう。
しかし、本来のところは聞かせたくなかったのだろう。
その末路が悲惨なものであったから──。
番人の一人に葛姫が葬られるという事実。
「申し訳ないのですが、私も詳しくは……」
「あー、ええとさ」
銀が雪弥の言葉を遮り、頭をがしがしと掻きながら言う。
「何です?」
自分から訊いておいて言葉を遮るなど。雪弥は少し眉をしかめて返す。