鬼神姫(仮)
──苦しい。苦しい。

しかしそれは肉体に異常を来しているわけではないと自身でわかる。これは感情なのだ。

感情が苦しいのだ。

──誰を、誰に対して何を思っているというのか。

知りたい。けれど、何者かが知るなと警告を与えてくる。お前は何も知るな、と訴えかけてくるのだ。

今のまま、何も知らなくていい、と。

しかし、それとは反対に、知るべきだと言ってくる者もいる。

お前は、思い出すべきなのだ、と。

一体、何を思い出すというのか。忘れていることなど、何もない。

霧原銀の記憶は全てあるのだ。

和らぐ苦しさを銀は溜め息と共に吐き出した。










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