鬼神姫(仮)
酉嶋が必要以上に自分の前に現れていた理由を漸く理解した。彼の西の番人。葛姫を殺した者。
だから、彼が現れると心が落ち着かなくなったのだろう。
己の中に流れる血が、彼を危険人物だと教えていたのだろう。
今生でも、自分の命を狙う者だと。
「……覚醒とは?」
雪弥はぼそりと呟いた。
凪が言っていた言葉。
覚醒──即ち、葛姫の記憶を手に入れろということだろうか。
どうしたらいいのかなど、わからない。その術がわかるならば、直ぐにでも実行するだろう。
雪弥は、はぁ、と息を吐いた。
誕生日まで、後一ヶ月を切っている──。