鬼神姫(仮)
転生した者と転生前の者は違うというのか。雪弥には何もかもがわからなかった。
「まあ、そうかもな。俺も、そこの小娘には何の感情も湧かない」
知羽は言い、雪弥へと視線を向けてきた。雪弥はそれを受けて、眉をしかめる。
添い遂げる運命にある。そう言ったのは知羽本人のはずなのに、知羽が雪弥に興味を示すことはなかった。
しかしそれは葛姫の生まれ変わりだからだとばかり思っていた。知る鬼の転生後の姿。知ることは何もないからだと思っていた。
けれど、違ったのだ。
知羽は雪弥そのものに興味を持てないだけのようだった。
「それで、何が知りたい」
「白瀬様の占いでは、どのように出ているのですか?」
早雪が訊くと、知羽は小さく息を吐いた。
「喋り方を以前のように変えないか? 話辛い」
「貴方様がそれを仰有いますか? 誰のせいで、私がこのようになったと?」
早雪は皮肉を込めたような口調で言う。今度の会話は、雪弥に理解出来るものではなかった。この差は一体何なのか。
「……矛盾している。お前は花雪ではないのだろう」
「嘗ては花雪でございます。その記憶を消せるものではありません」
早雪は強い口調で言い、知羽を睨め付けた。
銀と陽は背後に控えているだけで、何かを発することはない。
「まあ、強く言うなら、変えますよ。知羽様」
早雪は長い髪を掻き上げて、溜め息を吐いた。すると、その姿は雪弥に既視感を与えた。
この姿は知っている。