鬼神姫(仮)
その身体にまだ十代中頃だった蒼間が駆け寄る様を、幼い雪弥はぼんやりと眺めていた。
己が何を言われたのか理解するのには少々時間を要した。自分の命は後、十年程。
その言葉が現実味を帯びることはなかったが、周囲の者は丁寧にその準備をしていった。
まず、散り散りになった番人を見付け、彼等を監視する。そして、いざそのときが近寄れば彼等を収集する準備。
そして雪弥にも監視を付けた。
只でさえ、時たま窮屈だと感じる日常が更に窮屈になったが、次第にそれには馴れた。その理由は彼女を取り巻く者が彼女を気遣っていたからだろう。
それでも自分が死ぬなど信じられなかった。
ーー況してや、殺されるなど。
雪弥は深い息を吐いて、姿勢を正した。目の前ではまだ、銀と緋川が睨み合っている。
否、睨んでいるのは銀の方だけだ。