鬼神姫(仮)
銀は目の前にいる見目麗しい男を睨み付けつけたが、彼が動じる様子は微塵も感じられなかった。その瞳は赤みがかかっていて、見る者を怯えさせる。
「……っ。そもそも、鬼神姫って何なんだよ」
銀が悔し紛れに呟くと、緋川という男はおや、とまるで有り得ない生物を目にするような視線を寄越した。緋川はいちいち癪に障る言動をする男だ。
「番人ともあろう者が、鬼神姫を知らないなど。貴方の親御様は何を教えてきたのか」
その言葉に銀は自分の怒りが沸点に達するのを感じた。
ーーどの口が。
銀は拳に力を込め、そこに気を送った。だが、それは何も起こらず不発として終わる。
「この部屋ではどの能力も無効になります。そして、番人ををやるつもりがないのなら、能力を使うのはおやめなさい」
緋川の言葉に銀は舌打ちをした。
豪華な屏風が取り巻く雪弥にちらりと視線を向けるも、彼女は無表情に近い顔をしたまま何も言わない。